ごあいさつ

お菓子づくりに携わって30数年。
お客様が喜んで下さるご様子を、
遠くからでは無く
もっと身近に感じたい。
大量生産には果たせない、
手作りならではの繊細にして沁み入る味わいを、
お客様の心へ直接お届けしたい。
丁寧に。ていねいに。原点に還り、「菓子」としての姿に、
作り手の心をあらわす。
そんな思いから、この度「茶菓・山川」を開くことといたしました。

滋賀県は湖西・高島にて生まれ育ちました。
比良山系からの伏流水である美しい湧き水と、
水先である琵琶湖。
肥沃な土壌に広がる田畑に囲まれた故郷の光景は、
振り返るといかに、私の心の拠り所であったと気付かされます。
私たちを育む生命の根源である水と共に、
変わりゆく故郷の姿の中に今一度、
立ち戻って地域の方と農作物を育みたい。
私の生きる術であるお菓子づくりに重ねて、小さな種をそだててゆこう。
そう心に誓い、高島大納言小豆の花を、故郷にて咲かせることにしました。

若き頃より、菓子の心を知るため茶道に入門しました。
茶室という空間の静寂の中、
稽古を重ねるうちに見えてくる、
ひとつひとつの作法の意味と向き合いました。
湯の沸る音。炭の弾ける音。香の薫り。
薄暗いからこそ有り難さを増す日射しのまばゆさ。
これらが一体となる世界観に至福を感じ、
またその場でひとときの手伝いが出来る、心ばかりのもてなし。
茶道菓子という存在に携われること。
私にはひそやかな喜びであります。

故郷を胸に、
これまでのお出逢いに感謝をもって、
生涯をかけ、私が菓子職人を生業とする証。
わずかながらもこつこつと、自ら育てた小豆を手に。
今、私に出来る最良のものを、お客様にお出ししたい。
これまで以上に向上し、お菓子づくりに邁進したい。
仕込みのとき。仕上げのとき。菓子づくりに向き合う最中には、
いつもお客様の喜んで下さるお顔を想像して作り上げております。
お一人でも多く、これからもお出逢いがありますように。
お菓子を通して、皆様のお役に立てますように。

平成二十九年七月一日

茶菓・山川
山川誠